遺産相続に関するトラブルは一般的な家庭でも十分起こり得ることです。2019年度の司法統計年報データによると、遺産をめぐる争いで裁判になった件数は12,000を超え、トラブルの7割以上が5,000万円以下の相続で起きています。2015年より遺産相続の基礎控除額が引き下げられたため、区内に土地を所有している場合、相続税の課税対象になることを想定しておかなければなりません。相続財産に占める不動産の割合が大きいほど、遺産分割の際に揉める傾向があるようです。
「銀行がわからない?」
もしも今、あたがが亡くなったとしたら、あなたの財産を把握している人はいますか。あなたの配偶者やご家族はあなたの財産がどこの金融機関にどのくらいあるのか分かっていますか。事故や急な病気で意識が戻らないまま亡くなってしまうこともあり得ます。あなたが遺言書を準備していれば問題はないのですが、そうでなければご家族は苦労をすることになるかもしれません。
相続の手続きを進めるにあったて、亡くなった人(被相続人)の財産を調べ財産目録を作成することになります。現金や預貯金、土地、建物、有価証券、保険証券、ゴルフ会員権、自動車、宝石、貴金属などや、借入金、ローンの債務までを相続財産として確定します。その後、相続人全員により遺産分割協議が行われ、遺産分割協議書が作成されます。
相続財産について少し付け加えると、被相続人の死亡前3年以内に受け取っていた現金などは生前贈与した財産として課税対象になります。子ども名義の口座でも「名義預金」は課税対象です。また、生命保険金や死亡退職金は被相続人の死亡に起因する財産という考えから「みなし相続財産」として相続税が課税されます。
※名義預金とは受取人名義の口座でもお金をもらったことを受取人が知らない口座
※みなし相続財産は500万円×法定相続人の数が非課税となります
預貯金の通帳や印鑑の保管場所、証券会社の口座や借入金など、やたらに人に教えられるものでないことは分かっています。それでも、いずれ誰かに見られることを前提に、エンディングノートにご自身の財産を書き残すことはいかがでしょうか。残された財産が分かれば、ご家族にとってそれを探すことはさほど難しいことではないかもしれません。
「息子に成年後見人になってもらうから安心⁈」
成年後見制度とは、認知症などで判断能力が低下し、預貯金の管理や各種契約ができなくなった人を法的に支援・援助するための制度です。すでに判断能力が低下している人のための「法定後見制度」と、今は元気だけど後々のことを考えた場合の「任意後見制度」があります。
ここ数年、成年後見制度を利用される方が増えているようですが、必要に迫られてという方も多いのではないでしょうか。つまり、本人がすでに認知症になってしまったため、預貯金の引き出しや、相続の手続きができなくなり「法定後見制度」を申立てされた方たちです。そこで、成年後見制度の注意点をいつくか記しておきます。
1. 法定後見制度の場合、親族(申立人)が成年後見人になれるとは限らない。
2. 親族が成年後見人になった場合、家庭裁判所から後見監督人が選任される。
3. 成年後見人に弁護士などの専門家が選任されれば報酬が発生する。
4. 成年後見人以外は預貯金を引き出すことができない。
5. 被後見人になると生前贈与ができなくなる。
6. 成年後見人は被後見人が亡くなるまで解任できない。
7. 被後見人になると会社の役員を続けられない。
※成年後見人が指定された場合、本人は「被後見人」となります。
成年後見制度は本人の財産を管理する(守る)ために利用する制度であることを十分理解し、元気なうちからご家族で話し合われることをおすすめします。